理論社

第9回

2020.09.01更新

自分の道を見つけたい! 第9回 ここいろ篇3

今までのすべてを吹き飛ばすくらい好きな子ができた!
すべて自分ひとりで決めて思いのたけをぶつけた告白

高畑さん(さーちゃん) 高畑さん
(さーちゃん)
中学生時代はとにかく学校では、おちゃらけキャラで通せば乗り切れるという学習はしたんですが、やっぱり外でつけている仮面に心は疲れていきました。
でも、家でも両親は自分を受けとめてくれる状態ではなく、鬱々として、兄の真似をしてちょっとした家出や万引きなどの悪さをしてみる、ということがありました。
きっと「探して欲しい、見つけて欲しい、そして話を聞いて欲しい」って思ってたんです。でもそんなことしても誰も探しに来ないし、悪さしても誰も見てなくて、しかられることすらない……。

そういうむなしい時間を過ごす中で、いちばん救いとして大きかったのは本でした。小説、児童文学、ファンタジーと、なんでもいいから手にして読みふけっていました。
愛や死について書かれた心理学の本など、中学生の頭では到底読めないような難しいものにも手をのばしていましたね。理解はできないんですけどね。 とにかく、自分について知りたかったんです。

私の場合は、この時期はまだ「男の子を好き」という気持ちも全くない訳ではなかったんです。でも、だからこそ自分のことがよく分からなくなっていきました。
ただ、女の子に向かう気持ちと、男の子に向かう気持ちでは、熱量がまったく違うことは感じていました。

高校生になると良い友達に恵まれて人間関係は楽しくなり、そんな中、1年生のときに男の子が好意を寄せてくれたので、初めて「つきあう」ということをしてみました。
ところが、いざつきあってみると、ぜんぜん楽しくなかったんです。
友達として一緒にいる分には楽しかったのに、手をつないでも全然ドキドキしない。女の子あつかいされるのが嫌で……。三ヶ月ほどで別れてしまいました。 それで、「自分はそもそも恋愛に向いてないんじゃないか」なんて考えていました。

苦しい時代に児童文学やヤングアダルト文学(思春期の題材を扱う文学)が救いとなって夢中で読んでいたという高畑さん。
最近は児童文学やヤングアダルト文学のジャンルでも、LGBTQをテーマにした小説がぐっと増えてきました。図書館などに行って目に止まった本に手をのばしてみると、新しい扉を開く「運命の一冊」に出会えるかもしれません。

さて、一度は男の子とつきあってみて、上手くいかず、恋愛そのものができないのでは? と悩んだ高畑さんですが、すべてを吹き飛ばす熱い恋心を知ることになります。

高畑さん(さーちゃん) 高畑さん
(さーちゃん)
男の子と別れてしばらくしてから、同じテニス部所属の同級生の女の子を好きになったんです。
この「好き」が、それまで頑なに抱えていた「女の子を好きなんて絶対に認めちゃだめだ」といった考えを、ぜんぶ吹き飛ばしてしまうくらいの熱烈な「好き」だったんです。
「これが恋というものなんだ」と初めて知った、そういう人でした。そのために、自分は「女の子が好きなんだ」ということを認めざるを得なくなりました。

でも、すごく仲良しな子で、二人でよく行動していたので、その子の「○○君が好きなんだ」といった恋愛相談を聞くことになったりして、顔では笑ってるけど、心は泣いていました。
だけど、そうは言っても、私とその子もものすごく仲良しで、手をつないだり、キスをしたりなんてこともしてたんですよ。きっとその子は、あんまり同性愛とか異性愛とか、こだわりのない子だったのかもしれません。
私としては、そんな関係なものだから、どんどん好きな気持ちが膨れあがっていきました。

でもある日、相手の子に「○○君に告白しようと思う」と相談されてしまったんです。
そのときに、これは、自分の気持ちをちゃんと言っておかないと辛いぞ、後悔するぞ、と思ったので、告白する決心をしました。
それでその女の子に「あなたのこと恋愛対象として好きなんだ。これまで手をつないだりチューしてたのも、私にはそういう思いがあってのことだったんだ」と伝えました。
  生まれて初めて、同性愛についてカミングアウトした瞬間でした。

だけどそのとき、彼女にフラれる怖さもあったから「言わないと後悔すると思ったから伝えたけど、あなたが男の子が好きなことは知ってる。だから”さーちゃんは友達だよ”と言ってフッて欲しい」って、予防線を張ったんです。相手から「何言ってるの?」なんて言われてフラれると立ち直れないから……。 彼女は優しい子だったので、「さーちゃんのことは“愛してる”以上に”大好き”だよ」と言ってくれました。そして、「でも、私は男の子が好きだから、ごめんね。さーちゃんは友達だよ」と、しっかりフラれました。

このときは号泣しましたね。
そして、この一件で「自分はやっぱり女の子が好きなんだ」ということがはっきりしました。はっきりしたこと自体は良かったのですが、それによって新たな不安も抱くようになりました。
女性を好きな自分は、「結婚して、一軒家に住んで、子どもを育てて」なんていう普通の生き方はできないんだと、「幸せのルート」から外れてしまったんだと思いました。
一生ひとりで生きていかなきゃいけないんだ、と思いつめるようになりました。
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