理論社

2020.05.15更新

自分の道を見つけたい! 第2回

大堀貴士さん(シュート) 大堀貴士さん
(シュート)
例えば自然の中で遊んでるときさ、本来は、自分の身体能力を実感できている子どもなら、「ここまでは自分には出来る、これ以上は危険」って分かるんよ。木に登るのも、「この高さまではいける」と分かるし、川にダイブするにしても、自分には出来ないと思ったらやらない。だから、小さな怪我はするけど、大きな事故にはなりにくい。
その危険度が分かるためには、小さい失敗のステップを踏んでいく必要があるんやと思う。小さい危険を経験するから、自分の体が、出来る範囲を覚える。
子どもが「自分の力で行きたいところに行く」ためには、ステップが必要なんよね。

で、いちばん子どもが大ケガをするパターンが、大人が手助けして、いきなりポンッと高いところに乗せちゃうパターンやねん。
子どもは自分でたどり着いた場所じゃないから、危険度が分からなくて、いきなり飛び降りて大ケガをしたりする。
それと同じように、現代は大人が子どもに「与えすぎる」という傾向が強くて、子どもの体の奥に埋まってる潜在能力が育ちにくくなってると思うなあ。
それは、子どもが自分で登るべきステップの前に、エスカレーターを付けちゃうようなもの。大人は自分が責任を問われるのが怖くて、先手を打って「小さい危険」をどんどん取り除いてしまう。

「小さいステップを自分でこなしていく必要がある」ということを私は登山で体感したことがあります。まったく初心者なのに、いきなり2千メートル以上ある高山にトライしたら、スタミナが尽きて足腰が立たなくなってガクガクと全身が笑ってるみたいに震えてしまい、重いリュックを担いだままでは一歩も動けないという状態になってしまったのです。でも、山は自力で下山しないと帰れません。高い山ですからフラフラした足取りで歩くと、谷底に転落して一瞬で成仏、ということにもなりかねません。結局、仲間に十数キロもある大きなリュックを持ってもらわないと下山できませんでした。自分がこれほどまで歩けなくなるなんて、思いもよらないことでした。

ところが、それから低い山から登ってトレーニングを積み重ねていくと、いつの間にか足腰が頑丈になって、すいすい登れるようになっている自分に気づいて驚きました。ステップを踏んでちゃんと自分の足で歩くことを重ねていると、いつの間にか、より高い山も登り切る体力や技術や知恵が身についているものなんですね。

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