理論社

第15回

2020.12.01更新

自分の道を見つけたい! 第15回 G1さん篇3

G1さん G1さん
だって学校に行ってないから、自分がどれくらい遅れてるのかも知らないんですもん(笑)だから、焦りも不安も感じようがなかったんですよ。
つくづく思うのは、学校で成績をつけて競争させるっていうのは、日本という国全体の成長力とか、そういうことを考えたら必要だと思うのかもしれないけど、それを突き詰めていくと全体で見た時に、メンタルクオリティが早めにつぶされちゃう子が一定数いるんじゃないかなあと思います。

もっといろんな生き方を許容できる環境だったら、好きなことや、やりたいこと、追究したいことがある人は、普通に学校に行くという道に進まなくても、さっさと途中でドロップアウトしちゃったほうがいいんじゃないかなって思います。
そうして好きな事、やりたい事を追求していったとしても、その過程でどうしてもやりたくなくてもやらなければならない事、それは出てくると思うのですが、前向きな気持ちでその道に入ったのであれば、乗り越えられる可能性も飛躍的に上がる気がしています。
ぼくの場合、中学生という多感な時期に好きなだけ馬に乗れてたっていうことが、山あり谷ありいろいろあった道のりを乗り越える力にもなって、すごく今に生きてると思うから。

思わずぶんぶんうなずいてしまいましたが、G1さんがこういう感性を持てたのは、お父さんの気質を受け継いでいるところもあったのかもしれないなと思います。
勉強をまったくせずに馬ばかり乗っていたG1さんと、勉強や調べることが大好きで自学自習を突きつめて大学に行き、研究職になったお父さん。
まったく方向性は異なっていますが、やっていることは同じだと感じます。

これは私の個人的な考えですが、人間って「学ぶことが嫌いな人」って、実はいないように思うのです。
人それぞれに興味関心の方向がちがっていて、みんながみんな学校で習うような勉強が好きとは限らないだけで、自分が心から好きで興味のあることなら知的好奇心がむくむくと湧くというのは、人間という生き物に備わっている基本性質なんじゃないかな、と思っています。

よく、学校の勉強が苦手な子は、「なにが分からないのかすらも分からない」と聞きます。そして、そういう状態の子を世間は気の毒に思ったり、バカにすることすらあります。
でも、そういう状態って、本当に気の毒なのかなあ?
勉強が苦手な子も、音楽やバイクや将棋やアニメやと、対象はなんでもいいのですが、自分の好きなことならいくらでも調べられたり、行動力が湧くことってあると思うのです。
私には、そういうときに湧いている好奇心のほうが、ずっと本質的な「学ぶ意欲」じゃないかな、という気がするのです。

G1さんは、「今になって、数学とか勉強したくなってますけどね。馬のこと考えるときも、因数分解とかそういう数学の知識を、自動的に頭の中で使ってるんだろうなと思うので、勉強したらもっとピンと来るようになるのかなと思って」とおっしゃっていました。
そんなふうに、好きなことを追究した先に「あ、これ学びたいな」という欲求が湧いた瞬間こそが、「その人にとって本当に学ぶべき絶好のタイミング」なんじゃないかなあと、私は感じます。
自然に欲求が高まったときに学習するのと、嫌々学んだときとでは、吸収力がまるで違うんじゃないかな、とも思います。

若い年齢の脳ミソのほうがよく吸収するから若い内に勉強したほうがいいのかというと、私は中学高校時代の若い脳ミソに英語や科学を叩き込んだものの、まったくモノになってないので、そんなことないだろ〜、と個人的には思っています(笑)
逆に大人になってから心が欲するままに学ぶ英語や科学の楽しいこと!

あ〜、日本の教育が、「読み書き算数を修得した後は、なんでも、何歳からでも好きなことを学んで良い!」なんて制度になったらいいのになあ〜、と個人的には熱望しています。
そうなったら、「あいつは勉強のできない落ちこぼれだ」なんて価値観そのものが存在しなくなるのにね、と。
そして、G1さんのお父さんのように勉学や研究を通じてなにかを追究したい人も、さらに意欲的に深い取り組みができるようになるんじゃないかなあとも思います。

不得手なものをむりやり押しつけて劣等感や不健康な競争心を植えつけるのではなく、それぞれの人の個性に合わせて、得意なことや好きなことをどんどん伸ばしていけるような教育制度になったら、どんな世の中になるんだろうと、よく想像します。

G1さん G1さん
ハーモニィでは、誰にもなんにも強要されない生活でした。
それは、馬のことにしてもそうで、ヒロさんもシュートも、本人が聞いてこない限り、いっさいなにも言わないんです。
まあ、シュートもヒロさんも、馬は乗れるけど、別に馬術のプロというわけでもないので、単に「オレらもよう分からんし、G1はひとりで乗れるから、勝手に乗っといたら?」と思ってただけだと思うんですが(笑)

でも、そうやって放置してくれる環境があったから、「100%自学自習の世界」で過ごすことができたんですよね。
ハーモニィの馬たちも、今は年取って穏やかになってますけど、ぼくがいた当時は若馬ですから、乗りやすい馬たちじゃなかったんです。
ゲンキという馬なんか、人が乗ったら、わざと柿の木に体をぶつけにいったりするんですよ。で、乗ってる人の足だけが木にぶつかるようにする(笑)
馬って、本当は簡単に飛べる障害でも、上に乗ってるヤツが気にくわないと、絶対に飛ばなかったりしますしね。

そういう気難しい馬たちがいる中で、大人が乗ってもできないような高度なことを、どうやったら子どもの自分がやってのけられるか、子どもなりに「明日はこうやってみよう」「もっとこうしたらどうかな」と、めちゃめちゃ考えて工夫してたと思います。
自分で考えて、あれこれ試してみるしかなかった。
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